田坂裕美子さん
女の子のなりたい職業ナンバー1は昔も今も「ケーキ屋さん」。
「でも私は違いましたよ…」と田坂さんは笑って否定した。「北海道での学生時代、『ほんの少しの興味』で始めたアルバイトがこの世界に飛び込んだきっかけです」。
腕の立つオーナーが切り盛りする帯広の小さなケーキ店。オーナーとスタッフ、そしてアルバイトの田坂さんの3人だけ。「ケーキ作りのイロハから教えてもらいました。当時はそれが当たり前と思っていたのですが、いかに贅沢で貴重な体験であったかは後でわかりました」。
卒業後、京都のケーキ店で本格的に修業の道へ。そこで職人としての基礎を叩き込まれたという。
「とにかく基本を大切にする店でした。不器用でスピードもない私は、自分の拠り所である『丁寧な仕事』をひたすら徹底していました。それを評価してもらえたことは自信につながり、やはりこの道で…という思いを強くしました」。
ところが、田坂さんはそこに安住することなく、単身欧州への修業へと旅立った。まずは英語圏のアイルランドに滞在し、そして念願のドイツヘ。「以前からドイツのオーソドックスな焼き菓子に惹かれていて、どうしても現地で学びたかったのです」。本場の修業で得たものは意外にも「肩の力を抜いて楽しく菓子作りをする」ということだったという。
日本に戻り、昨年10月に一人で開業した取り寄せ専門の焼き菓子の店に「コンディトライ・デティ」という名を付けた。「コンディトライとは洋菓子店という意味。デティというのはドイツで言葉もわからない私に、親切にしてくれた修業仲間の女の子の名前です」。
田坂さんが心を込めて作るタルトや焼き菓子は、素朴な風貌だが、口にすれば季節を感じる工夫が随所にこらされている。
様々な人との出会いが財産と語る田坂さん。これからの課題は「自分のレシピの確立」と自身が作る焼き菓子のようにシンプルで力強い。(天理市前栽町)。


