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中塚 隆子さん

東大寺大仏殿の屋根を間近に臨む「子規の庭」には樹齢150年を超えると推定される一本の柿の古木がある。
「料理店の女将という立場を超えて、子規や奈良を愛する人達のために、夢中になってやってきました」とその柿の木の前で「子規の庭 」保存会理事の中塚さんは語ってくれた。
正岡子規が奈良を旅したのは、約120年前の明治28年秋のこと。奈良市今小路町の老舗旅館「對山楼(たいざんろう)」に投宿し、そこで出た柿の美味しさを子規は書き記していた。 
「ここが名旅館の跡地であることは存じていました。けれど子規も見たのでは…という柿が残っているとは想像もしませんでした」。
中塚さんは料理店を開くために手に入れた土地の縁から、更に色々なことに巡り合っていく。子規の子孫の作庭家が奈良で活躍していたこともその一つ。孫にあたる正岡明さんの協力を得て、子規が好んで詠んだ野の花を植えた庭を作ろう。「對山楼」で詠んだ「秋暮るる 奈良の旅籠や 柿の味」の句碑を建てよう…と思いをどんどん実現させていく。
「元を辿ればここは東大寺の境内。そのつながりも大切にさせて頂き、関係者が集まって保存会として活動しています。私ひとりではなく、不思議なご縁から出会った様々な方と心を一つに子規の顕彰に動いています」。
とはいえ毎日この柿の木を見守っているのは中塚さん。「子規が女中に命じてお代わりまでした美味しい柿は、この木に成ったものだと思えてならないのです。どうぞ足を運んで庭をそぞろ歩いてみて下さい」と微笑んだ。
(奈良市今小路町)

プロフィール

中塚隆子さん(65歳)